管理物件をせどりなどの古物売買が可能なものに変えたい大家さんや管理会社の方へメリットとデメリットを解説
いわゆるせどりなどを含む古物営業を行う方は右肩上がりに増え続けています。
コロナ禍の影響や副業を容認する社会の風潮などは今後も古物営業者を増やし続ける要因となるでしょう。
現在、賃貸物件や分譲マンションなどでは規約上「営業禁止」となっている物件がほとんどです。かつてからの慣習の影響が大きいのだと思います。
しかし、管理物件で古物営業を許可することのメリットは大きいと考えられます。なぜなら「ニーズが高いから」です。
当事務所では古物営業許可申請を専門的に取り扱っているため、古物営業許可に関する相談が多くあります。
その中でもダントツに多い相談内容が「賃貸物件で古物商許可を取りたい」というものなのです。
そのため、ニーズの高さは身を持って体感しておりますし、困っている市民の方が多いのも事実だと思います。そして、従来規約で禁止していた古物営業を承諾することは大家さんや管理会社にとってもメリットが多くあると考えています。
今回は賃貸物件や分譲マンションなどで古物営業を行うことを許可することで、大家さんや管理会社にもたらされるメリットとデメリットについて解説したいと思います。
大家さんや管理会社が入居者の古物営業を承諾することのメリット
大家さんや管理会社が入居者の古物営業を承諾することについてのメリットは以下の通りです。
- 物件の空室状況が改善される。
- 入居者の違法営業を防止できる。
- 物件や会社のアピールになる。
など。
それぞれのメリットについて下記のとおり解説していきます。
物件の空室状況が改善される
大家さんにとって一番大きい点がこのポイントだと思います。
先程説明したとおり、古物営業を行っている、または行いたいと思っている市民の方は大変多くなっています。
その反面、古物営業を行いたくても住居の規約で古物営業が禁止されているため泣く泣く我慢している人も多くいらっしゃるのです。
大家さんにとっても困るのは入居者が古物営業を行うために退去してしまうこと。実際に他に許可を取れる手段が無く、古物営業を行える物件に引っ越しを考えているというご相談者もいらっしゃいます。
古物営業が行える賃貸物件や集合住宅というものはかなり少ないですので、逆に考えれば古物営業を行える物件というものを作れば住居を探している人へのアピールにもなるかもしれません。
入居者の違法営業を防止できる
現在、賃貸物件や分譲マンションでこっそり古物営業を行っている者も多くいます。
管理者の承諾を得られないことから、古物営業許可を取ることなく無許可営業を行っている入居者も多いでしょう。
そうなると、違法状態の入居者が多く存在するという状況に陥っているため、管理上もよろしくありません。
警察の捜査が入り、逮捕者が出てしまうと他の入居者からの評判も悪くなってしまうことでしょう。
※大家さんや管理会社が知っておきたい豆知識!
従来管理物件で古物営業許可を取得するには、警察署に古物営業を行うことを認める管理者からの承諾書を添付する必要がありました(現在も必要としているところはあります)。
しかし、現在その承諾書を古物営業許可の要件としていない都道府県警察が増えています。
ということは、管理者側が気付かないうちに古物商を営んでいる入居者が増えているといった状況はザラにあるわけです。そしてその傾向は今後増々増加していくことでしょう。
古物営業を承諾するための対策は?
逆に言えば古物営業の承諾をすることで、管理者側が入居者の古物営業に対して把握できる状況にしておけば違法状態の防止にも繋がります。そのためには下記のような対策を取っておくと良いでしょう。
古物営業を行う者に対しては書面にて特約を結び遵守事項を守ってもらうようにする
古物営業といっても様々な取扱品目があります。中には車の部品(バンパーなど)を取り扱う方もいることから、全ての品目を許可してしまうと頻繁な荷物の出し入れなどで他の入居者に迷惑をかけてしまうことは十分に考えられます。
また、現在せどりを行う者の多くはインターネットを活用していますが、古物営業の手法としては直接対面による販売もあります。直接対面を主とする方法では来客があるので人の出入りは必然的に多くなってしまうでしょう。
そのため、承諾をする段階で書面にて取り扱う物品や方法などをしっかりと定めておくことで、管理側が入居者の古物営業についてコントロールできるようになります。
例)
・古物営業を行える範囲は次の物品とする。○○、○○、…。○○や○○は取り扱ってはならない。
・古物営業の方法は、インターネットを用いた手法に限定し、来客や仕入れ業者が住居に立ち入ることを禁止する。ただし、宅配業者の荷物の受け渡しは除く。
物件や会社の利益に繋げられる
古物営業を行う者が急増していることに加え、副業者の増加などの社会的背景に沿った物件を創り出すことは社会のニーズに対応したサービスとして評価を受けられると思います。
さらに現在古物営業を行える物件というのは数少ないため、プレスリリースなどを活用することで管理会社のアピールにも繋げられるでしょう。
アパート雑誌や物件検索サイトなどには「古物営業可」などの記述やアイコンを表記することで他の物件との差別化を図ることができます。管理会社で「古物営業OK物件特集」などを組んでも良いかもしれません。
また、古物営業を承諾することにあたり賃貸物件の価格を上げるということも考えられます。
なぜなら、賃貸物件で古物営業を行いたいという人は本当に困っており、相場より月々数千円高い価格でも入りたいと考えている方も多くいることが想定されるからです。
現在入居している方には特約料や保証料等の名目でお金をいただき、利益を上げても良いかもしれません。
物件で古物営業を行うことを認めることのデメリット
大家さんや管理会社が管理する物件で古物営業を行うことを認めることでのデメリットも考えられます。メリットだけでなくデメリットについてもよく考え、バランスを見定めて検討することが必要だと思います。
周囲で盗難事件があった際に捜査の対象となる
古物商に関しての一般的な知識として、古物営業者の周囲で盗難事件が起きた際、その古物営業者は捜査の対象となります。
そもそも物品の安全な流通や古物営業者の管理を目的として古物営業許可制度が作られているため当然の帰結と言えるでしょう。
かなり稀な例ではありますが、そういった場合に入居者の所に警察が事情を聞きに来ることは十分に考えられます。
ただし、許可を取得してまっとうな営業を行っているのであれば何も問題はありませんし、他の入居者に関しても説明がつきますので無許可営業者が捕まってしまうことよりも負担は遥かに少ないと言えるでしょう。
他の入居者との関係
物件全体が古物営業者の入居者だけなら良いのですが、古物営業を行わない入居者から見れば迷惑だと感じてしまう点もあるかもしれません。
しかし、一般家庭で古物営業を行う者のほとんどが先程説明したような「インターネットを用いた小規模のせどり」です。
「インターネットを用いた小規模のせどり」とはどのようなものか。例を挙げてみます。
インターネットを用いた小規模のせどりの例
・客とのやり取りはパソコンやスマートフォンのみで行い、直接の仕入れもインターネットからまたは外出して購入するという方法に限定される。
・古物営業に関しての人の出入りは宅配業者のみ。宅配業者も用いず、仕入れはリサイクルショップなどで買い付けるだけという場合も多い。
・看板などは必要とせず、郵便受けや表札に屋号を表記することも稀(そもそも一方的に発送するだけなので表記する必要性が乏しい)。
・特に物音がするわけではないので、他の入居者は古物営業を行っていることに気付かないことがほとんど。
上記のタイプでせどりを行っている者が多いため、大家さんや管理会社の負担はほとんど無く、また他の居住者に迷惑をかけることも無いでしょう。物件を「ペットOK」にするよりハードルは低いのかもしれません。
ただし、先述したとおり車の部品などの大きな部品を取扱う場合は注意が必要です。その点が懸念される場合は許可をする物品を限定するなどの対策を取ることが必要でしょう。
当事務所では大家さんや管理会社が古物営業を承諾するためのサポートを行っています
当事務所では古物営業許可申請の代行を専門的に取り扱っていますが、同時に古物営業を許可したい管理側の方達のサポートも行っています。
古物営業とはどのような物品をどのような方法でやり取りするのか。また古物営業を承諾するとどのような影響が考えられるのか。そしてどのような方法で承諾をすれば最適なのかなどについて全国対応で行っていますので、古物営業の承諾についてお考えの方はぜひご依頼ください。