現在の古物営業の本人確認方法は現実的でない
古物営業法では、古物の買取を行う場合には原則的に売り主の本人確認を行わなければならないとされています。
中古ショップなどが不用品を買い取る際に「身分証の提示を求めてくる」などのことです。
しかし、最近では個人がメルカリやヤフオクなどで中古品を売買することも多く、個人の古物商はほぼこの形態で事業を行っています。
そうなると、実際には本人確認を行うというのは非常に厳しいと思います。
相手方も個人であることがほとんどであるため、本人確認に応じてくれる方もいるでしょうが、その数は当然少なくなってしまうと思います。
これは現代の古物のやり取りの主流に法律がついていけていないという状態であるため、今後の法改正に期待せざるを得ませんが、今回は現在の法律上でも本人確認義務を回避する古物営業方法について考えてみたいと思います。
本人確認義務と古物台帳記載義務を合法的に回避する古物営業方法
それでは、古物営業法の本人確認義務を回避する古物営業方法を考えていきたいと思います。
まず、本人確認義務を回避するためのポイントとしては、
- 本人確認義務が生じない品目は多い
- 海外からの古物の輸入は古物営業の取扱がなされない
- 新品は古物営業の取扱がなされない
という点が挙げられます。これらを元に本人確認義務を回避する古物営業方法を考えます。
①小規模の限定的な商品のみを取り扱う
本人確認義務についての規定をまとめると以下のとおりとなります。
- 買取時に本人確認が免除されている物品は1万円未満の商品
- 1万円未満の商品でもゲームソフト、DVD等、書籍、自動二輪・原付(一部の部品を含む)は買取時に本人確認が必要
(確認等の義務を免除する古物等)
第十六条 法第十五条第二項第一号の国家公安委員会規則で定める金額は、一万円とする。
2 法第十五条第二項第一号の国家公安委員会規則で定める古物は、次の各号に該当する古物とする。
一 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コードその他の汎用性の部分品を除く。)を含む。)
二 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物
三 光学的方法により音又は影像を記録した物
四 書籍
古物営業法施行規則より
なお、上記に該当する商品の売買時には本人確認義務のみならず古物台帳記載義務も課せられないものが多くあります。
(帳簿等への記載等の義務を免除する古物)
第十八条 法第十六条ただし書の国家公安委員会規則で定める古物は、次の各号に該当する古物以外の古物とする。
一 美術品類
二 時計・宝飾品類
三 自動車(その部分品を含む。)
四 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品(対価の総額が第十六条第一項で定める金額未満で取引されるものを除く。)を含む。)
古物営業法施行規則より
美術品類や時計・宝飾品類は1万円未満であれば本人確認義務は無いとされていますが、売却時の古物台帳記載義務があるため、売却時に買い取った者の住所・氏名・年齢・職業を聞かなければなりません。また、本人確認義務が無い品目でも条例で「青少年から買い取ってはいけない」と定められているため、メルカリ等のフリマサイトで仕入れる場合は年齢確認書類(結局は身分証)が必要となってしまいます。
となると、上記の1.2に該当する品目のみをリサイクルショップ等の実店舗で仕入れるようにすれば、古物営業許可だけで真っ当に営業を行うことができます。
上記の品目のみといっても、衣類・事務機器・機械工具・道具・皮革ゴム製品・金券などが取り扱えるため、販売販路はかなり広いと思います。
②小売店で購入した新品のみを取り扱う
新品の取扱については原則的に古物営業にあたりませんので(「新品」の考え方や古物営業にあたるか否かには詳細な説明が必要になりますが、長くなるためここでは触れません)、ショップ内では新品のみを販売するという方法も考えられます。
この方法を取れば、そもそも古物営業に当たらないため、当然本人確認義務は生じません。
しかし、上記①で説明した品目と混在して取り扱う場合は、それぞれを明確に分けて管理する必要も出てくるため、実際の業務では注意が必要です。
新品は希少品でない限り売買で利益を出すことは難しいですが、今はebayなどの海外向けの販売方法が人気であり、外国から需要の有る商品であれば思わぬ高値で売却できる可能性もあります。
〈参考:ebayサイト〉https://www.ebay.co.jp/
仕入れる時も売却する時も本人確認&台帳記載をしなくて良い古物のまとめ
売買時に本人確認義務も古物台帳記載義務も無い取り扱い品目(国内) |
(一万円未満の)衣類・自転車類・写真機類・事務機器類・機械工具類・道具類・皮革ゴム製品・金券類 |
本人確認&古物台帳記載をしない古物営業モデル
以上の条件を踏まえた上で、古物営業法上の本人確認や古物台帳の記載を要しない古物営業モデルの一例を想定してみます。
ebay等の海外向けサイトで日本製品&アニメキャラクター製品を販売する
海外での日本製品の信頼性は高く、また日本独自のアイデアから生まれた製品も外国人の目を引きます。
日本アニメは配信サイトから多くの外国人へリアルタイムで届けられるようになり、日本でしか買えないアニメグッズは大変人気のようです。
今は(令和5年現在)激しい円安であり、日本の製品全般が外国人から見ると安く感じられます。ただし、外国へ商品を発送するのですから送料を考えると安易な価格設定にはしないほうが良いでしょう。
例えばebayでは日本語サイトもあり、グーグル翻訳機能などを用いれば英語の話せない方でもネット販売を行うことができると思います。
日本製品は大手量販店等で新品を購入し(1万円以上も可)、アニメグッズ等はリサイクルショップ等で1万円未満のものに絞って購入する(販売は1万円以上の価格でも可)、と商品を分けて仕入れを行えば、古物営業法上の本人確認義務や古物台帳記載義務を回避することが可能です。
ただし、上記の営業を行うにあたっては、古物営業許可が必ず必要となるため、事前に取得しておいてください。また、海外サイトで販売するにあたってもURLの届出は必要となります。
メルカリのフリマサイトで少額の衣料品や海外から輸入した中古品をネット販売する
前項で触れたとおり、1万円未満の衣類やバッグ、靴などの仕入れは本人確認義務も古物台帳記載義務も生じません。また、海外から古物の輸入を行い、国内に販売する方法も原則的には古物営業とはなりません(輸入を行う対象が国内業者の場合は古物営業となりますので事前に確認してください)。
上記を踏まえ、国内からの仕入れは少額の衣類等に絞り、ブランド品等の高額なものは海外サイトから購入して販売するという方法も考えられます。
衣類関係では、すでに自己の不用品を販売している方が多いですが、古物営業許可を取得して自己の物以外の物も販売できるようにすれば販路は広がると思います。
現在でも本人確認義務を回避して古物営業を行う方法はある
以上、古物営業法上の本人確認義務を回避して古物営業を行う例をお伝えしましたが、ネットでの古物営業者に多くのチャンスが訪れている半面、警察も無許可営業等の違反には力を入れてくるでしょう。
無許可営業で摘発される例は毎年上がっていますし、ネット販売のすそ野の拡大に比例して今後は摘発件数が多くなることも予想されます。
古物営業を行う際には、まず自分が行える営業方法を検討し、実際に売買を行う前には必ず古物営業許可を取得しましょう。
当事務所では、全国対応で古物営業許可取得のサポートを行っており、ebay等の海外サイトのURLの届出にも対応しております。これから古物営業を行おうとお考えの方はぜひご利用ください。